任意整理とは?

任意整理とは、弁護士が直接サラ金業者や銀行などと交渉して、債務額や分割回数について新たに合意するものです。

それによって債務額を減らしたり、長期分割にすることで、毎月の返済の負担を軽くすることができます。

任意整理は、破産や個人再生を利用するほどではないが返済を楽にしたい方、免責不許可事由があり破産できない方、自宅を残したい方、破産すると資格制限を受けて困る方などにお勧めします。

任意整理は、破産・個人再生と異なり、裁判所を使わないのが一つの特徴です。

専門的な知識や経験が求められ、債権者との交渉も必要であるため、弁護士に依頼するのが確実です。

そして、メリットもありますがデメリットもあります。

基本的なことを解説していきますが、当法人に相談していただければ、任意整理を選択すべきか、他に良い選択肢が無いかなど、疑問や不安に思われることにお答えします。

すぐに依頼するかどうか決めなくても、一度相談をしておいて、見通しを立てることで気持ちが楽になる方も多いです。お気軽にご相談ください。

相談を予約する

任意整理のメリット

返済の負担が軽くなる

破産・個人再生の場合は、法律の定めに従って借金がゼロになったり減額されたりします。

しかし任意整理は、破産・個人再生と異なり裁判所を使いません。

それでも返済の負担が軽くなる理由は、3つあります。

①利息制限法による引き直し計算

誰もが知る大手企業でさえ、利息制限法の上限金利(15~20%)を超える利息を取っていた業者が多いです。

そこで利息制限法の金利に従った引き直し計算を行うと、上限金利を超えて払っていた利息を、元金の返済に充てることができます。

その結果、債権者が主張するより借金が減る場合があります。

例えば100万円残っていると思っていたら、実は70万円まで減っていたというイメージです。

場合によっては元金は完済しており、払いすぎた利息を返してもらえる場合もあります(いわゆる「過払い金」)。

例えば借金が50万円残っていると思っていたら、実は完済しており、20万円の過払い金を返してもらうというイメージです。

ただ最近は、利息制限法どおりの金利しか取っていない業者も多いですし、そもそもクレジットカードを使ったショッピングなどは対象外です。

ですから、引き直し計算によって返済の負担が減る、あるいは過払い金が出るのは、長年同じ業者から借り入れと返済を繰り返してきたような場合です。

②交渉による減額・長期分割

利息制限法に従った引き直し計算を行っても、借金が残ることは多いです。

そこで弁護士が直接サラ金業者や銀行などに対し、債務の減額や長期分割を認めるよう交渉します。

交渉に応じるかどうかは各債権者の自由です。

しかし債権者としては、破産によってゼロになったり、個人再生によって大幅に減額されるより、交渉に応じた方がメリットがある場合も多いです。

ですから、ある程度の条件であれば交渉に応じる業者が多いですが、その基準は業者によって違います。

そこで任意整理では、各業者の特徴を踏まえた交渉や、無理のない返済計画の作成が重要となります。

当法人は、これまで多数の任意整理を行い、ほんの一例ですが次のような実績があります。

  • 7年以上の長期分割を認めさせ、その業者に対する月々の返済を1,000円台まで減らした事例
  • 利息を免除した上で、元金のみの60回分割にできた事例
  • 頭金を支払うことで、元金の2割を免除した事例

③時効による債権の消滅

借金の返済日から、一定期間(原則5年)が経過すると、借金の返済義務がなくなる「消滅時効」という制度があります。

時効になっているケースはそれほど多くありませんが、それに当たれば、その借金は返済する必要がありません。

ただし、消滅時効の効果を主張するには、「援用」という手続きが必要となります。

簡単に言うと、債権者に対して「この借金は消滅時効が完成しているので返済しません」という意思表示をすることです。

ここで注意が必要なのは、せっかく5年経っていても、一部返済してしまったり、「今度返しますから待って下さい」という対応をしてしまうと、時効期間が振りだしに戻ってしまいます。

ですから、ご自身で対応せずに、弁護士に相談することをお勧めします。

時効については特設サイトを設けておりますので、そちらもご覧ください。

時効援用onlineへ

破産と異なり、高額な財産でも残すことができる

破産の場合は、原則99万円を超える財産は処分しなければなりません。

他方、任意整理ではその必要はありません。

つまり99万円を超えて、自宅・車・保険などの財産を残すことができます。

破産における免責不許可事由のような制限がない

破産の場合、「免責不許可事由」があると、借金がゼロにならない場合があります。

例えば、浪費やギャンブルによって大きく財産を失ったり借金が増えた場合などです。

しかし、任意整理にはそのような制限はありません。

ですから、借金の返済が苦しいけれど、免責不許可事由があって破産できないような場合は、任意整理が有効です。

破産のような資格制限がない

破産手続開始決定が出ると、資格によっては、持っている資格を失ったり、取得できなくなるという制限があります。

例えば、警備員・生命保険募集人・建設業・宅地建物取引主任者などです。

しかし、任意整理にはそのような制限はありません。

ですから、借金の返済が苦しいけれど、資格制限を受けると困るため破産できないような場合は、任意整理が有効です。

破産・個人再生よりも周囲に知られる可能性が低い

破産・個人再生の場合は、官報に住所・氏名が掲載されます。

官報とは、法律改正などを知らせる、国が出す新聞のようなものです。

買える場所は限られており、インターネット上でも見られますが、普段見ない人が偶然目にする可能性は非常に低いです。

ただ、官報を通じて家族・友人・同僚などに知られる可能性はゼロではありません。

その点、任意整理であれば官報に載りません。

弁護士から依頼者へ書類を送るときも、法律事務所名を書かずに送ったり、事務所まで取りに来ていただくという方法で、家族にも知られずに済みます。

破産・個人再生よりもスピーディーに解決できる場合が多い

依頼を受けてから終了するまでに、破産の場合は半年〜1年以上、個人再生の場合は半年程度掛かります。ケースによっては、それ以上掛かることも珍しくありません。

その点任意整理の場合は、債権者から取引履歴が来るまで1~3ヶ月掛かるものの、依頼から3~5ヶ月程度で終了することが多いです。

任意整理のデメリット

破産・個人再生に比べると借金は減らない

特定の債権者が反対した場合でも、法律上の要件を満たせば、破産の場合は借金がゼロに、個人再生の場合は大幅に減額されます(一部対象とならない債務もあります)。

一方任意整理は、あくまでも各債権者の了解が必須です。

利息の免除や長期分割であれば応じてもらいやすいですが、元金の大幅な免除にはなかなか応じてもらえません。

ですから、破産・個人再生に比べると借金が減らないというのはデメリットです。

いわゆる「ブラックリスト」に載る

これは、信用情報機関に事故情報として登録されるということです。

登録されてしまうと、数年間は新たな借入をしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作ることができなくなります。

これは任意整理に限らず、破産や個人再生でも同様です。

もちろん、銀行口座を作ることは問題ありませんし、住民票や戸籍にも載りません。

どういう場合に任意整理を利用できるの?

破産・個人再生の場合は、法律上、利用できる条件が決まっています。

しかし任意整理には、そのような法律はありません。つまり、法律上は誰でも利用可能です。

ただ、ある程度債務を減額したり長期分割ができたとしても、到底返済できないような場合は、現実的に利用は難しいでしょう。

任意整理の流れ

①ご相談

まずは法律相談をお受けし、手続きの選択や費用のご説明などを行います。

②ご依頼

正式にご依頼いただきましたら、任意整理の対象とする債権者に対し、代理人弁護士として速やかに受任通知を送ります。

これによって債権者からの取り立ては止まり、それ以降の連絡は、全て代理人弁護士に来るようになります。

また、債権者に対し、債権額を書いた書類・取引履歴(借り入れと返済が一覧になった書類)・契約書などを送るよう求めます。

③引き直し計算・債務の確定・返済計画の作成

利息制限法の金利に従った債務額を計算し、任意整理の対象とする債務の総額が分かります。

それを踏まえ、毎月いくら位なら返済を続けられるか、どの程度減額や分割ができそうかなどを検討し、返済計画を作成します。

到底返済できないような状況であったり、債権者の了解を得ることが難しいと思われる場合は、破産や個人再生への方針変更も可能です。

④債権者と交渉

返済計画を踏まえ、弁護士が各業者と交渉します。

こちらの希望に応じてくれる業者もいれば、応じてくれない業者もいます。

粘り強く交渉し、場合によっては返済計画を見直します。

⑤債権者と合意

依頼者の了解を得た上で、各債権者と合意し、合意内容を書いた書類を作成します。

書類の名称は、「合意書」や「和解契約書」など様々ですが、法律上の効果は同じです。

⑥返済

合意書の内容に従って、依頼者から返済を続けていただきます。